酒と味「大羽」 <東京 銀座>

銀座には、いろいろな夜の顔があります。
ゴージャスなフレンチ、接待のための懐石、軒を連ねる本格江戸前寿司。高級という一語で形容される街ですが、その裏の裏まで足を踏み入れると、実はこんな看板が目に入り、銀座の違った一面を知ることができます。

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下町の駅裏にひっそりとある飲み屋街の看板みたいですが、ご覧の通り銀座8-2の文字が・・・。
看板に描かれたそれぞれの店に、きっとそれぞれの夜の表情があるんだろうなあ。お店の名前を眺めているだけでも、演歌のひとつも生まれそうな気配です。

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さて、今夜私がめざすのは、その中の一軒、 
酒と味「大羽」。

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集合看板の下をくぐって細く暗い路地に入り、真中あたりを奥に折れて、そのまた突き当たりまで行くと、やっと渋い暖簾が。でもいったんドアを開ければ、そこは別世界。銀座の定番とも言うべき、いなせな着物姿のママと同伴客。そしてこれまたお決まりのジャイアンツネタで盛りあがっています。

清潔なカウンター内で軽やかにお店を守るのは、大羽ご夫妻。この場所ですでに20年以上料理店を続け、客とご夫妻三位一体となったコミュニケーションはまさに「熟練」の域。カウンターの奥には、機能的な引き戸の食器棚と、その一角にはめ込まれた手書きメニューの黒板。お刺身、焼き物、揚げ物、煮込み、ご飯類。狭い台所で本当に全部できるの?と、心配になるぐらい豊富で魅力的なアイテムが並びます。黒板を眺めてしばし迷っていると、巧みに解説するおかみさんの言葉に何度もうなずき、あっという間にコース料理のできあがり。

毎日築地から仕入れるという新鮮な魚も魅力ですが、カウンターの上に並んだ「おばんざい」類が白眉。
東京のコアな場所で長く営まれている割には、味がブレていないというか、仕込みに時間をかけられているんだろうと想像するに足る微妙な塩加減にホッとします。

お酒にはさほどこだわりは感じられないけど、有名どころの日本酒・焼酎が数種。日本酒の種類にあれこれ思わなくなった私には、それで十分かと。一升瓶を冷やすスペースがもったいないのか、すべて四合瓶に移し替えてあり、美しい江戸切子のお銚子になみなみと注がれます。

構えず、奢らず、余裕を持って酒と味を楽しむ。そんなたとえが最適な「大羽」。銀座には意外と少なくなった大人の男の店かもしれません。その感覚は、支払いの段になっても続きます。
銀座で遊べる余裕がある大人の男が払う額。抽象的ですが、それなりの覚悟は必要でしょう。頼まなくても黙って領収書が用意されますが、領収書に収入印紙を貼るおかみさんの後姿を見ながら、そんなことを考えました。

最後に、こんな店にふらっと連れて行ってくれる男性を知っている「女性」がいらっしゃれば、あなたはきっと幸せです。

■酒と味 大羽(日本料理) <銀座>
東京都中央区銀座8-2-16  03-3571-4302

ご予算:一人12,000円~

2002年05月27日