スピロス(ギリシャ料理)

私の同僚で、しょっちゅう会社に寝泊りしている男がいます。
もちろん仕事はできるし段取りが悪いわけでもないのですが、一番の理由は仕事量が完全にオーバーフローしていること。でもそれと同じぐらい大きな理由に「小さなお嬢さんが二人の家では、彼にテレビチャンネルの選択権がない」ことなんですね。

彼が大好きなのはスポーツ観戦。ゴールデンタイムの放送は子供達にチャンネルを奪われ、日本の早朝だったりする地球の裏側での試合は、ごそごそ起きて自分だけテレビを見るわけにもいかず。「ちょっと休憩!」とスポーツ番組を観戦しつつの徹夜は、家族への配慮だったりするのです。東京国際女子マラソンの時もちゃんと休日出勤し、わが事務所のすくそばを走る高橋尚子を観に行ったりも。
その彼は、今年に入るともうすでにそわそわしています。今年は仕事しないぞ!と今から宣言したりしています。

そう、2004年はアテネ五輪が開催されるオリンピックイヤー。もちろん女性は違うと否定しませんが、やはり男は闘いを好み、闘いの前に自分なりに戦術を研究したり、闘いを見て興奮する楽しみを知っているのです。かくいう私も、All About Japan「アテネ五輪への道」(ご担当は女性ですが)の大ファンだったりします。

そんなスポーツ観戦が何より楽しみな愛する同輩に、大人の食べ歩きガイドとして贈りたいインフォメーション。「じゃあ、今年の開催地、そしてオリンピック発祥の地でもあるギリシャの人たちって、どんなものを食べているの?」

そこで今回は、そんなアテネに夢を馳せて、本格的なギリシャ料理店、しかも昨年後半にオープンした新星「スピロス」を紹介することにしましょう。
(ちなみに、この写真はスブラキというギリシャ風串焼)

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場所は表参道。原宿駅から明治通りとの交差点を過ぎ交番の手前を左折。通称キャットストリートと呼ばれる(右折して渋谷まで続く道を主に指すようですが)遊歩道を進みます。原宿らしい光景を見ながらしばらく行くと、「Spyro's」という白地にブルーの大きな看板が見えてきます。

1、2階はカジュアルなショップで、ビルの表側に設けられた階段を上って店にたどり着くちょっと特異なアプローチ。多少たじろくものの、都会のど真ん中にありながら海辺に立つ建物の最上階レストランのようで、面白いロケーションと妙に納得。

店内は殺風景なぐらいに真っ白。やはりギリシャのイメージとは白壁なんだと改めて思いましたが、表参道からここまでの道のりとはかけ離れ、地中海に思いを馳せるには無理がありすぎ。席に着いてしばらくはちょっと違和感も感じたのです。

(誤解のないようにあらかじめお伝えしますが、「スピロス」はもちろんきちんとしたギリシャ料理店。店の随所にモニターが下がっていてそれを見ながら贔屓のチームを応援するといったスポーツバーとは違います)

メニューが渡されます。ゆっくりと目で追いながら、ナルホドかなり本格的ではないですか!と安心、同時に食いしん坊本来の好奇心がムクムクと沸き起こってきました。

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まずはアペタイザーとして「デップセット」を。タラモサラダ、ザジキ(ニンニクときゅうりの利いたヨーグルト)、へースト状のナス、三種を生野菜につけて食べます。ニューヨークの惣菜店でも見かけるドルマデス(ピラフやひき肉をブドウの葉に包んで煮込んだ料理)もありましたが今回は断念。

続いてこの写真の「アサリのウゾ蒸し」。ウゾとは地中海一円で最もポビュラーなアニゼットというリキュールの一種。水で割ると白濁する不思議なお酒ですが、主成分はスターアニスという薬草で、これが独特な風味を作りだすのです。フランス料理のメニューにも時折ペルノー(こちらはフランス産のアニゼット)風味とあるぐらいなので、香づけには良く使われる酒。というより、どこの国でも自国産の酒でアサリを蒸す習慣があるのですね。

ただこれは、ウゾの香りというよりオリーブオイルとニンニクの強烈な強さが先に出ていて、ただただ酒のつまみとして最高。

そして、ギリシャ料理として一番有名なのがこの「ムサカ」。
一言でいうと、なすとミートソースのラザニアのような料理で、日本の食卓でもかなりポビュラーになってきたので、ご存知の方も多いでしょう。ただ、「スピロス」の味は本場の再現なのか、ズシンとくる食べ応えがなによりも特徴的でした。

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というより、ムサカに限らすギリシャの料理は、量の多少に関わらず総じてボリュームがあるものばかり。つまり、ヘビー、オイリー、ガーリッキー、ミルキー、チーズ、ヨーグルトのオンパレードといった感がありまして、白壁に囲まれた涼しげな内装と原宿の小ぶりなファッションビル3階という立地には少々気後れしつつも、これはもう腹一杯になりたい男の食い物といわざるを得ません。

さらに、お酒も前述のウゾだけではなく、ヨーロッパで最も早くからワインを作り始めたギリシャならではの、発酵前に松ヤニを加える「レチーナ」や、ワインの代表的ブランド「サントリーニ」(サントリーとは関係ありません)までもラインナップ。価格はボトルでも2,000円台から揃っており、ワインで口をリフレッシュしつつ重い料理に食らいつく、南ヨーロッパの国らしい楽しみがそこにあるのでした。

さて、こちらの店名「Spyro's」とは、1896年近代オリンピック第1回アテネ大会のマラソン優勝者「スピロス・ルイス」から名付けられたか、それともギリシャ最大の洋酒メーカー創始者である「スピロス・メタクサ」からの命名なのでしょうか。スポーツと酒。いずれも、男達が愛してやまないアイテムだと思いませんか。

オリンピック開催国ギリシャを知るために、金メダル奪取の話題で盛り上がるために。「スピロス」は、格好の観客席となるに違いありません。

■スピロス(ギリシャ料理)■
東京都渋谷区神宮前4-26-28 ジャンクヤード3階
Tel:03-5786-4446
Fax:03-5786-4454

月曜~木曜、日曜 :11:00~24:00
金曜、土曜 :11:00~01:00
ご予算:4,000円~

2004年02月06日