かんだ(日本料理)

6月入梅して以来、ずっと暑い日が続いている。
ニュースや情報番組では「記録的な」という言葉が飛び交い、家で揚げ物をしたくない主婦が、天ぷらやコロッケの惣菜売り場で列をなす。こう暑いと、それに輪をかけるぐらいHotなエスニックか、あっさりとした清涼感が持ち味の日本料理か、その二つぐらいしか選択肢がなくなってくる。

そういう意味で日本料理は本当に万能だ。
冬は、年始のおせちに鍋。梅雨のうっとうしい時期もハモや鮎といった特色のある魚が目や舌を楽しませ、秋は松茸をはじめ「いわずもがな」である。そして、酷暑の今においても、世界で一番涼しい料理といっても過言ではない。

そんな期待も重なって2004年の夏は日本料理店に足が向くことが多い。が、それはあっさりと涼しく食べたいだけではなく、2004年は日本料理店の新規オープンラッシュでもあった。

話は変わるが、2年程前ある雑誌のインタビューで「これからどんな料理がはやると思いますか?」との質問に対し、「寿司と地中海以南の料理」と答え、それなりにブームが到来した。なんのことはない、寿司職人とイタリアンの料理人が余ってくるから、次に来るだろうと予想しただけなのだ。で、日本料理のオープンラッシュも、地方からの東京進出や、吉兆・なだ万等大手による多店舗展開で料理人を大量に育てた結果、ブームの土壌ができただけのことだと思う。

そして、徳島の「青柳」から「バサラ」へと移ってきた神田さんも、そんな流れの中で満を持して独立し、「かんだ」を開いた。ご実家も料理店で本来は継ぐべきだったそうだが、東京でお客さんもできたのでこちらで店を開きました、と神田さんは語る。

かんだ

kanda3.jpg「かんだ」の場所は元麻布。といってもあまりピンと来る人は少ないと思うが(イタリアン「ラ・プリムラ」の上、と言い換えてもあまり変わらないかな)、まったくの住宅街でしかも道が入り組んでおり、難所と表現してもいいくらいの立地。直線距離にすると六本木駅からそう遠くはないはずだけど、そこに通じる道がないのでテレ朝通りを経由して大回りしなければならない。

テレ朝通りまで出て広尾方面に下り、ナチュラルローソンというあまり見かけないワインレッドのローソンを越えて左折、そのまま坂を下る。正面に「ラ・プリムラ」のしゃれた看板が見えるのですぐに場所はわかる。が、写真のごとく入り口が奥まっており、気づくまでにも一苦労だ。玄関の撮影に訪れた際も、入り口がわからずウロウロしている男性グループと遭遇した。

店内は白一色で明るく、無駄な装飾や余計な物がほとんどない。文字通り涼しげだ。逆に冬は寒々としてしまうのではと心配するぐらいである。ダイニングとしては、カウンター8席と個室一室で完結。カウンター割烹と言っても火を使う料理は別途奥の厨房から出されるので、カウンターの前では、まな板と最終的なデッシュアップのみ。

料理のコースは10,500円。最近「あさみ」「うち山」など、10,000円のコースのみという値段設定が比較的成功しているような気がする。この値段で本格的な日本料理を食べられるとするならば、割安感があるのかもしれない。

「かんだ」の料理は、京懐石のような格式や流れはなく大阪以西の日本料理店に多く見られるタイプ。寿司も握れば麺も出すし、調味料にも細かく手を加える。素材のよさはもちろんだがすべてにちょっとした工夫が施されていて、それが楽しい。また、「バサラ」からの流れだろうか、ワインこそ合うかなあ、と感じた皿もいくつかあった。

酒類も、四国のものを中心に渋い品揃え。
とりわけご主人から推薦のあった「湧水の酒」は、愛媛の梅錦が仕込むが、一般には購入できないお酒とのこと。料理を邪魔しない素直なキリリ感は、さすがにおすすめだけあって「かんだ」との相性が光っていた。

kanda2.jpgさて、「かんだ」の最大の魅力といっても過言ではないのが、ご主人を支える女性スタッフである。徳島の青柳出身とのことで、大阪出身の私をしても、やさしい「関西なまり」に心が動く。包丁を握るご主人以外、お酒を含めたサービスはすべて女性が担当。裏で火を使う調理に男性陣もチラッと見えたが、表舞台は女性の立ち振る舞いがキーとなるのだ。

伝統と独創、格式とモダン、ハードとソフト・・・。などなど、相対する印象がさまざまに入れ替わる「かんだ」の中で、真っ白な店のイメージそのままの清潔で控えめな女性のサービスは、ある種の安定を感じさせ、くつろぎや癒しに変わっていくことだろう。こちらへはぜひ、男性同士で訪れることをおすすめしたい。

■かんだ(日本料理)
東京都港区元麻布3-6-34  03-5786-0150

ご予算:12,000円~

2004年08月09日