あらき<麻布十番>
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◆最初は「動機」の話から
今回ご紹介をする「あらき(「き」は、七を重ねた喜の叢書体です)」は、友人に強くすすめていただいた1軒。普段、麻布十番~南麻布・白金界隈は私の行動範囲でもあるし、時折店の前も通っていて「あらき」の存在は記憶にありました。検索するとシンプルながらもお店のホームページもみつかり、電話番号を控え、行きたい店ランクの上位にいつも位置していました。ただそのメモも、割り込んで入ってくる魅力店が後を絶たないので、いつも順番通りには消化できず、「あらき」は未訪のまま数年が過ぎました。
とある白金のモツ焼き屋で卓を囲んだ時、いっしょに飲んだ仲間のお友達であるKさんが偶然その場に居合わせ、紹介されました。Kさんは、私の記事やさとなおさんとの対談を楽しみに読んでおられたとのこと。それがご縁でメールのやり取りが始まり、記事への感想をいただいたり、レストランに対する意見を求められたりしました。
簡潔であることをよしとする電子メールの世界で、Kさんのメールは、まるで筆でしたためたような情緒と女性らしさに溢れた美しい文章。返信をするにも気合が入ります。そんなやり取りの折、Kさんから「あらき」について推薦を受けました。「毎日夕食を召し上がっている常連さんの老夫婦がいらっしゃるような、とってもしっかりした小料理屋さんでCPも優秀です。」と。これはボヤボヤしてはいられない。海外在住友人の帰国に合わせて(日本の居酒屋がよかろうと)、さっそく計画を練り訪問しました。
◆堂々たる・・・
「あらき」の最寄駅は麻布十番。ただしかなり遠いです。店側の情報によると田町からも白金高輪からもさほど時間は変わらない様子。位置的には三之橋。桜田通りを北上した場合、古川橋を越えて次の信号あたり。ただし、桜田通りからは一本田町側に奥まった路地沿いにあります。写真を見ていただいてもお分かりのように、回りは全くの住宅街。昼間に写真を撮りに行ったら、子供さんを後ろに乗せて自転車で走るお母さんがひっきりなしに通って、なかなかシャッターが切れません(笑)。
今まで何度か前を通りましたが立派な暖簾の印象しかなく、しかも小料理屋と聞かされていたので、入店したとたん驚きました。入ってすぐ左側に掘りごたつの座敷、右側にテーブル席、そして奥が厨房を囲むようにカウンター席と堂々の店構え。お揃いの作務衣を来たスタッフの柔らかい出迎えが待っています。海外在住者はすかさず掘りごたつを希望。座敷に上がってのスタートとなりました。
◆食材のよさ、調理の巧みさ
メニューを渡されます。ほぅ、なかなかいい値段だなあ・・・。CPも優秀との情報もあり居酒屋感覚で訪問しているので、単価1000円以上の料理ばかりが並ぶメニューを見ると、ふとそんな気になります。しかも体裁や記載内容もそっけない。でも、店構えからして期待値を大きく上回ったので、あまり気にせずいつものようにガンガン注文。
最初に出されたトマトのサラダ。このトマトを食べたとたんノックアウトされました。甘い・ジューシー・香り高い。高級イタリア料理店でもここまでのトマトにはなかなか出会いません。また、こんなトマトを仕入れている店なら、メニューに必ず「○○村の××さんが丹精こめて育てた無農薬トマト」とか、お値打ち文が載せられていますが、「あらき」はメニュー名のみ書かれているあっさりしたもの。
これは侮れない。そして、これから出てくる料理へもかなり期待大!。次の穴子の焼き物も、蒸して限界までふくらんだ大ぶりの身に醤油をぬってカリっと焼き上げてあります。そして白眉はお刺身。とびきり新鮮な海の幸が大ぶりにカットされてドンと。久しぶりに鮨店以外でお刺身の美味しさを堪能しました。
お酒も料理と同じところに(次のページ)に載っていて、同じようにそっけない。山口の獺祭(だっさい)においては、「かわうそ(獺)」の漢字が出せなかったのか、だっ祭とひらがなになっていたりします(笑)。でもじっくり見ると、全国から優良な地酒が満遍なく取り揃えられ、しかも尋ねるとその日の特選地酒もある模様。また今ではどの居酒屋でも、先にグラスをテーブルに持ってきてその後一升瓶から注ぐというパフォーマンスをやるのですが、「あらき」では、グラスに注いだ状態で持ってこられるので銘柄も確認できません。でもどの酒も保存状態や温度も申し分なく、美味しくいただきました。
ご飯がすばらしいとも聞いていたにも関わらず、そこに至るまでに満腹。残念ながら次回へ持ち越しとなりました。で、おそるおそる会計をお願いしたところ、これが当初メニューを見ながらアレコレ考えていた予想をはるかに下回る安価。一皿の量もそこそこあるし会計時の余計なプラスαが少ないのでしょう。KさんのCPも優秀といわれた意味が、初めてここで理解できました。
◆交通不便な都心の変わらない風格
さて、ご紹介をしてきたように「あらき」は、まさに奇をてらわない自然体の料理店。懸命にいい食材を仕入れて真面目に調理して丁寧に提供する、その基本姿勢にまったくブレがありません。また、この交通不便な場所が功を奏したのか、回りに意識する他の居酒屋もなく、情報に振り回されることのない「あらき」の確固たる立ち位置は、「変わらない」ことがいかに心地よいかを体感させてくれます。
店を辞する際、「料理が遅くて申し訳ありませんでした」とのお詫びがありました。一品一品丁寧に作られているので個人的には遅いとも感じなかったのですが、それも「あらき」の尺度では遅かったのでしょう。
最後におまけです。麻布十番の駅に向かいながら、私は携帯を取り出し1軒の店に電話を。「たった今4人テーブルが空きました。どうぞ!」との願ってもみない朗報。そしてそのまま、ラウンジ・バー利用としても可能な「カーザ・ヴィニタリア」へと突入したのでした。
■あらき(居酒屋)
東京都港区南麻布2-6-17 03-3798-1995
予算:5,000円~




