リストランテ・ダ・ニーノ<乃木坂>
- カテゴリー:2.極上の料理店 |
- カテゴリー:<ジャンル別1>イタリア料理 |
- カテゴリー:<地域別1>六本木・西麻布・広尾
◆シチリア旅行の収穫
2005年夏、ぼくはシチリアを旅した。
ぼくの旅はご想像の通り食べて飲んで飲んで食べての繰り返し。シチリアの町から村へと渡りながら、そこにあるうまそーなレストランを、ネットやガイドブックで必死に探して訪ねる一週間。
シチリアでのゴハンは本当においしかった。日本との圧倒的な食材パワーの違い、火の入れ方の違い、気合の違い、そして愛情の違いを真のあたりに感じて打ちひしがれた。いろいろな国を旅するけれど、帰ってきてすぐまた行きたい! これほど強く念じたことも珍しい。
◆東京で探すシチリア
そんなシチリアでの暑い熱い経験は、日本に戻っても当分いや未だ冷めることがない。そんな想いのボルテージを「南伊度」と称して、「もぅー、南伊度があがりっぱなしやでぇ」と、食べ仲間に会うたび話した。また、最高潮に達した南伊度は、日本においてもシチリアのような料理が食べられるレストランを求めてやまなかった。
そんな当時のぼくに垂涎の情報飛び込んでくる。シチリア出身シェフ レンティーノ・アントニーノさんが、2005年8月末西麻布にシチリア料理のレストランをオープンしたというのだ。早速その店「レ・サリーネ・ダ・ニーノ」に勇んで出かけてみた。
ところが・・・、イイ店なんだけど何かが違った。ぼんやりと、でも確実に「これはぼくがシチリアで出会った料理ではない」と感じた。やはり日本でそれを期待するのは無理なのだろうか、と肩を落とす結果となった。
前菜をアラカルトで頼もうとすると、シチリアを代表するメニューに限って品切れですと言う。パスタに至っては日本人が好む高級食材を使ったものばかりをすすめてくる。それってシチリアですか? と問いたくなるのを堪え、それらしいものを選ぶも、スパゲティの茹で加減からしてゆるすぎだ。メインはパスして別の店で飲みなおそうと、料理が抜群に旨い立ち飲みへと流れる結果に。
その後もシチリアの味を求め食べ歩くが(もちろん美味しいイタリア料理店には数多く出会ったけど)、2005年の夏を彷彿とする場面にはいたらなかった。そんなとき、あるところから「レ・サリーネ・ダ・ニーノ」からシェフのアントニーノ(通称ニーノ)氏が辞めて独立するとの話が舞い込んでくる。
やっぱり・・・。
自分の名前を看板にした店を与えられたとしても、ニーノシェフは、西麻布では本当にやりたいことを実現できなかったんだ。シチリアはトラパーニ出身のニーノに対する期待は大きかっただけに、半年後のシェフの判断にも快哉を叫んだ。
では、新しいニーノの店はどうなんだ。さっそく予約を入れるも近々で自分の都合が付く日が満席の連続。オープンしたばかりなのに既に盛況の様子。これは早く行かねばとますます気持ちが高まって、やっとの訪問となった。
◆やっと見つけたシチリア料理店
新しい店「リストランテ・ダ・ニーノ」の場所は乃木坂。東京メトロの駅を上がってすぐの場所。乃木坂界隈は基本的に住宅地だが、駅の最寄り一角に飲食店が集中するエリアがある。フレンチ好きならご存知の「岡部亭」があった場所はすでにインド料理店。そして、岡部亭のソムリエが作ったワインバーも彼の名前打谷に変わっている。そして、その間に挟まれ小さく光り輝いている「リストランテ・ダ・ニーノ」も容易に見つけることができよう。
この場所、かなり見覚えがある。それもそのはず、ここは以前「寿司幸」という銀座の老舗から独立した寿司店。その後、インド料理にあけ渡した後の「岡部亭」がアットホームな展開となってこちらで再スタート。そして、「岡部亭」からこのたび「リストランテ・ダ・ニーノ」に替わった模様。駅から至便で環境も抜群のエリアだが、この5年ぐらいでかなりの変遷だ。
予約時の電話時、スタッフから「狭い場所ですので・・・」と何度も丁寧な断りがあったが、ほとんど火を使うことのない鮨屋から端を発している店舗はやはり狭い。しかも随所に施されたイタリア人らしいデコレーションはかわいいし面白いんだけど、よけいに店を狭くしている。
そんな小ぢんまりしたダイニングながら、来店時にはすでに人が一杯でスシ詰め状態。しかも、イタリア人そしてイタリア語を解する日本人の集団が多くを占める。おーっ。席についた瞬間から今日は確実に美味しいものにありつけるぞと直感した。
スタッフは厨房にニーノシェフとアシスタントらしきコックコートの女性、そしてサービス(後で聞くとデザートも担当しているそうな)の女性。合計三人の最小編成。これは料理が遅いかなあ・・・と少々イヤな予感も。
◆シチリアを表現する主張の数々
メニューを開く。最初の感想は「た、高い・・・」。例えばウニのリングイネ4000円。銀座の高級リストランテ並。コースは8000円と10000円也。強気だなあ・・・、でも、それには理由と自信があるんだろう、つまり、シチリアの味を日本で表現するには、それだけ厳選された食材を使う必要があるんだろうと、ぼくたち客を納得させるべき勇気を感じる。
サービス担当の女性。パッと見は可愛らしくて気弱そう。たった一人でどう切り盛りするんだろうかと思いきや、実に明快なメニュー&ワイン説明と的確な提案、そして笑顔を絶やさない爽やかさ。前の店からニーノシェフについて来たという強い意欲も頼もしい。
おすすめに従って、前菜とパスタをアラカルトで注文。シチリアの前菜は小さな器に1種類ずつ盛られてテーブルに所狭しと並べるのが定番だが、さすがに「ダ・ニーノ」のカウンターではスペース的にムリ。アラカルトで頼むも盛合せになって一気にやってきた。
その大皿を目にした瞬間、直感は現実になった。目のさめる彩り、立ち上る香り、口にした時のがっしりした質感、そして(意外と)塩が控え気味なところ等々、2005年の夏がここに甦った。あー旨い旨い。
選んだパスタのひとつ「トラパネーゼカサレッチャ」
併記されたイタリア語のメニューは「Linguine al pesto Trapanese」となっているが、リングイネではなかったので、トラパーニ風自家製パスタということなのだろう。まさにこのトラパネーゼを、2005年夏にトラパーニにて食したことを思い出す(シェフにそのことを言ったら、なんていう店で食べましたか、と聞かれ店名か思い出せなかった 苦笑)。
◆シェフをはじめ、3名のスタッフこそがシチリア
こうしてスタートを切った「リストランテ・ダ・ニーノ」が持つイタリアはシチリア島の息吹は、間違いなく本物だった。ワインもシチリアものが集められ(ワインは比較的リーズナブルです)、卓上には、味的に物足りなく感じる人のために、トラパーニ名物の塩もきちんと置かれている。
そして、スタッフ全員の人懐っこい雰囲気がなによりのシチリア食堂。自分で作った料理を自分自身でテーブルに運び、談笑しながら下げ物までやってしまうシェフの姿を見ていて、ああこれこそがシチリアにあって日本に一番欠けているシーンなのかもしれないなあと嘆息した。




